驚き!微生物の動きを動画で覗くと?

ここに掲載した原生生物は、谷口篤史博士らが野外から採集して培養している原生生物の一部です。映像と説明文も谷口篤史博士らによるものです。

  • ブレファリスマ

    Blepharisma sp.

    暗視野観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ラッパムシ目

    ブレファリスミンと呼ばれるピンク色をした毒の色素を持った繊毛虫。天敵の繊毛虫に襲われるとこの色素を放出して反撃する。また、飢餓になると共食いをして巨大化することも知られている。ラッパムシの仲間であるが、体を伸び縮みさせることはない。

  • ブレファリスマ・ウンデュランス

    Blepharisma undulans(ヒメベニミズケムシ)

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ラッパムシ目

    やや小型のブレファリスマ。大核は二つがつながった数珠状をしている。この種もブレファリスミンをもっており、薄いピンク色をしている。

  • シャットネラ

    Chattonella marina var. antiqua

    微分干渉観察法

    TSAR、ストラメノパイル、不等毛藻、ラフィド藻

    涙型をした褐色の鞭毛虫。時折大発生して赤潮の原因となり、漁業に被害をもたらす。魚類に対して窒息を引き起こすと考えられている。

  • ユープロテス・ユーリストムス

    Euplotes eurystomus

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ユープロテス目

    棘毛と呼ばれる、繊毛を束にして脚のようになった細胞小器官を持つ繊毛虫。棘毛を上手く動かして虫の様に基質上を歩き回り、大きな口にある繊毛を使って餌を吸い込んで捕食を行う。体は硬く、変形することはない。ユープロテスは種によって大核の形状が異なっており、この種は数字の3のような形をしている。かつて、歩行を行う繊毛虫は下毛類と棘毛類の二グループに分類されていたが、棘毛類は下毛類に含まれ、ユープロテスの仲間は過去に分類されていた下毛類に含まれないことが分かっている。

  • アスピディスカ

    Aspidisca sp.

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ユープロテス目

    ユープロテスに近い繊毛虫で、小型で丸い形をしている。活発に歩行運動を行い、基質上をその場でぐるぐると回っている様子がよく見られる。

  • ホロスティカ

    Holosticha polystylata

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、棘毛類

    ユープロテスと同じく棘毛を持ち、これを使って基質上を自由に歩き回るが、ユープロテスの仲間ではなく棘毛類と呼ばれるグループに属する。体はユープロテスのように硬くはなく、基質上を歩いているときは体をグネグネと曲げて移動する。この種は体に色素を持っているためピンク色のように見える。

  • ウロレプタス

    Uroleptus sp.

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、棘毛類

    ホロスティカと同じく棘毛類の繊毛虫。細胞後部は尾のように細長くなっているのが特徴であり、この部分にも棘毛が生えている。この繊毛虫も体が柔らかく、体をグネグネと曲げて移動する様子が見られる。

  • スティロニキア

    Stylonychia sp.

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、棘毛類

    淡水の止水域でよく見かける棘毛類の繊毛虫。棘毛類の仲間であるが、こちらはユープロテスのように体は硬い。体がやや曲がったような特徴的な形をしているため、他の歩行性の繊毛虫と比べて区別がつきやすい。

  • ロクロクビムシ

    Lacrymaria olor

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、シオカメウズムシ目

    白鳥の涙という学名の通り涙型をした繊毛虫で、和名のように著しく伸縮する首を持つ。物陰に隠れて首だけを出し、それを巧みに動かして獲物を探す。首の先端に口があり、餌となる生物が当たると口にある毒を発射して動けなくする。そして、その餌を丸呑みしてしまう。首は天敵などに襲われて失っても再生することが出来る。

  • ラクリマリア・アクタ

    Lacrymaria acta

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、シオカメウズムシ目

    ロクロクビムシとは別種の繊毛虫。首は伸縮できるが、L. olorの様には伸びない。こちらは物陰には隠れず、積極的に獲物を探して動き回る。

  • ロクソフィルム

    Loxophyllum meleagris

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、側口類

    葉のように扁平な形をした繊毛虫。遊泳は得意ではないためほとんど基質上を這うようにして移動する。細胞前部に毒針を持っており、これで繊毛虫やワムシを攻撃して捕食する。

  • ホマロズーン

    Homalozoon vermiculare

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、シオカメウズムシ目

    扁平で細長い形状をした大きな繊毛虫。こちらもロクソフィルムと同じくほとんど遊泳せずに基質上を這って移動している。細胞先端の口部に毒針を持っており、これで他の繊毛虫を攻撃して蛇のように丸呑みしてしまう。

  • プロロドン・スピロギロファグス

    Prorodon spirogyrophagus

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、シオミズケムシ目

    イチゴのような形をした繊毛虫。この属の繊毛虫は餌を十分に捕食すると遊泳をやめ、増殖シストと呼ばれるものを形成してシスト壁の中で細胞分裂を行う。また、他の種は繊毛虫を捕食するものが多いが、この種は特異的にアオミドロなどの糸状藻類を捕食することが知られている。

  • ラッパムシ

    Stentor muelleri

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ラッパムシ目

    名の通りラッパの形をした繊毛虫。普段は物などに付着し、細胞口部にある発達した繊毛で水流を作り、餌を口まで運んで捕食している。また、捕食者などの生物に物理刺激を受けると瞬時に体を収縮させる。この種は大型の細胞で色素などは持っておらず、大核は数珠状である。

  • ソライロラッパムシ

    Stentor coeruleus

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ラッパムシ目

    名の通り鮮やかな青色をした大型のラッパムシ。この色素はブレファリスマのものと似た分子構造をしており、ブレファリスマと同じく天敵に襲われた時放出して身を守るために用いられる。刺激を受けたりするとこの色素を放出するため長期間培養していると培地も鮮やかな青色になる。また、形態に富んでおり、採取地によって形状が異なる。大核は数珠状である。

  • ステンター・アメシスティヌス

    Stentor amethystinus

    暗視野観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ラッパムシ目

    名の通りアメシストの様な紫色の色素を持つラッパムシ。しかし、体内に共生クロレラをたくさん持っているため、紫というより黒っぽく見える。この種は他種のようなラッパ型にはならず、ファン型と呼ばれる柄が短いラッパのような形状で基質に付着している。大核は卵型。

  • ステンター・イグネウス

    Stentor igneus

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ラッパムシ目

    ピンク色をした珍しい種のラッパムシ。ソライロラッパムシやS. muelleriと比べるとやや口がすぼまったラッパ型である。大核は卵型をしている。微細藻類を餌として捕食しており、動画の細胞内に見える緑色のものは捕食されたクラミドモナスである。

  • ミドリラッパムシ

    Stentor polymorphus

    偏斜照明観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ラッパムシ目

    体内に多数の共生クロレラを持つ大型のラッパムシ。平地ではあまり見かけない種で、湿原によく生息している。S. muelleriと同じくこの種は体内に色素は持っていない。

  • ゾウリムシDIC

    Paramecium caudatum

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ゾウリムシ目

    学校の理科の教科書でよく紹介されている繊毛虫で、水質が悪くても生存できるため様々な場所で高頻度で見つかる。ゾウリという名前が付いているが、扁平ではなく立体的な複雑な形をしている。繊毛虫の収縮胞は丸い単純なものが多いが、ゾウリムシのものは発達していて花の様に見える。天敵に襲われるとトリコシストという針を放出して身を守ることが知られている。

  • ゾウリムシ位相差

    Paramecium caudatum

    位相差観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ゾウリムシ目

    学校の理科の教科書でよく紹介されている繊毛虫で、水質が悪くても生存できるため様々な場所で高頻度で見つかる。ゾウリという名前が付いているが、扁平ではなく立体的な複雑な形をしている。繊毛虫の収縮胞は丸い単純なものが多いが、ゾウリムシのものは発達していて花の様に見える。天敵に襲われるとトリコシストという針を放出して身を守ることが知られている。

  • ミドリゾウリムシ

    Paramecium bursaria

    位相差観察法(ネガティブコントラスト)

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ゾウリムシ目

    中型のゾウリムシで、細胞内に共生クロレラを持っている。形状も普通のゾウリムシとは異なっており、前部がややつぶれたような形をしている。

  • ボルボックス

    Volvox carteri

    暗視野観察法

    アーケプラスチダ、緑藻綱、ボルボックス目

    多数の細胞が球面上に配置された大型の藻類。鞭毛運動を協調させることでくるくると回りながら光の方へと泳ぐ。増殖は無性的に行っており、生殖細胞から子供が作られ、大きくなると親の体を破って出ていき、親はやがて死んでしまう。環境が悪くなると雄は精子束を形成し、雌は卵を形成することで有性生殖を行い、乾燥などの環境に耐えることが出来る。ボルボックスは種によって雌雄同体のものと雌雄異体のものがいるが、この種は雌雄異体である。

  • パンドリナ

    Pandorina morum

    微分干渉観察法

    アーケプラスチダ、緑藻綱、ボルボックス目

    8、16の細胞が密接に並んで球体になっているボルボックスの仲間。成長するとそれぞれの細胞が分裂して娘群体を作り、その娘群体が親群体から出て新たな群体として生活する。この時になると個体間が密接ではなく離れるようになる。

  • ユードリナ

    Eudorina sp.

    微分干渉観察法

    アーケプラスチダ、緑藻綱、ボルボックス目

    パンドリナと同じく16、32の細胞が球状に並んでいるボルボックスの仲間。パンドリナとよく似ているが、こちらの生物は群体が若いうちから細胞同士が離れている。

  • プレオドリナ

    Pleodorina sp.

    微分干渉観察法

    アーケプラスチダ、緑藻綱、ボルボックス目

    パンドリナやユードリナよりも多くの細胞が球状に並んだ藻類。ボルボックスほど大きくはないが、細胞が分化しており、細胞が大きな生殖細胞と小さな非生殖細胞を持つ。動画はまだ幼いため細胞の差がほとんどないものである。

  • テトラディモルファ

    Tetradimorpha tetramastix

    微分干渉観察法

    TSAR、リザリア、ケルコゾア、太陽鞭毛虫

    太陽虫と呼ばれる原生生物に鞭毛が生えたような生物で、分類的には太陽虫と近縁ではない。普段は太陽虫型と呼ばれる、細胞が球形で放射状の軸足という針のように細い構造を持った形態であり、鞭毛を使ってゆらゆらと動いている。しかし、物理刺激などを受けると軸足を引っ込めて細胞が細長く変形し、鞭毛を使って積極的に泳ぐ鞭毛虫型と呼ばれる形態となる。動画で遊泳しているものは鞭毛虫型になった細胞である。

  • オオムラサキホコリ遊走子

    Stemonitis splendens

    微分干渉観察法

    アメーボゾア、コノーサ、変形菌

    茶色の細長い子実体を作る変形菌。10cmもある巨大な子実体の集合を作るため、非常によく目立つ。これはその子実体から出てきた遊走子であり、長い鞭毛を使って水中を移動している。

  • カンパネルラ

    Campanella sp.

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ツリガネムシ目

    細胞の大きさが100µmを超える大型のツリガネムシ。細胞口の周囲に生えている繊毛列が発達しており、三周以上あるため、他のツリガネムシと区別がつく。この種は柄を形成して固着して捕食を行うが、培養日数が経つとよく遊泳していることが多い。

  • ディディニウム

    Didinium chlorelligerum

    明視野観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、シオカメウズムシ目

    細胞は樽型で繊毛が並んだ繊毛列が二列ある。別種であるD. nastumはゾウリムシを捕食することで有名(ロトカ・ヴォルテラの式)であるが、この種にゾウリムシを与えても捕食しない。食胞の内容物からおそらく微細藻類を捕食しているようである。また、体内に共生クロレラを持っているので緑色に見える。

  • テトラヒメナ

    Tetrahymena pyriformis

    暗視野観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ミズケムシ目

    池や川でよく見られる小型の繊毛虫。細胞前部がやや細くなった洋ナシに似た形をしている。いくつか種がいるが、形態的に見分けるのは困難である。T. thermophilaはテロメアとリボザイムの発見でノーベル賞を贈られた研究に貢献した生物である。

  • ナスラ

    Nassula sp.

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ナスラ目

    糸状藍藻であるユレモを専門的に捕食する繊毛虫で、アオミドロなどの糸状藻類は捕食しない。ユレモを食べるときはまるで麺をすするかのようにそのまま細胞内へと取り込んでしまう。細胞口には特殊な細胞小器官があり、ユレモが吸えなくなったりすると切断できるようにノコギリのような構造がある。

  • ビコソエカ

    Bicosoeca sp.

    微分干渉観察法

    TSAR、ストラメノパイル、不等毛藻、ラフィド藻

    有機質が多い水に住む原生生物。ワイングラス型をしたキチン質の殻に入っており、鞭毛を使って流れを起こして餌を捕らえている。刺激を受けると直ちに鞭毛をコイル状に巻く反応を起こす。

  • ヘキサミタ

    Hexamita sp.

    微分干渉観察法

    メタモナズ、ディプロモナス目、ヘキサミタ科

    ヘキサミタ属の原生生物の多くは寄生性であり、魚などに病気をもたらすことが知られているが、この種は自由生活性で病原性を持たない。鞭毛は遊泳に使われているものと細胞の溝に配置されているものがある。

  • ポドモナス

    Podomonas kaiyoae

    位相差観察法(ネガティブコントラスト)

    オバゾア、テコモナデア綱、アプソモナス目

    小型の鞭毛虫。基質上にいるときは前部にある鞭毛を振り、別の鞭毛を基質に接着させながら滑走する。

  • ビンガタカラムシ

    Favella sp.

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、カラムシ目

    海産性の大型繊毛虫で、ワイングラス型の殻から繊毛列を出して水中を泳ぎ回る。刺激を受けると遊泳を停止し、細胞収縮させて殻の中に引っ込む。

  • ヘマトコッカス

    Hematococcus sp.

    微分干渉観察法

    アーケプラスチダ、緑藻綱、クラミドモナス目

    寒天質の膜につつまれた緑藻類。普段は緑色であるがストレスなどを受けるとキサンチンという赤い色素を生成するため細胞が赤色になる。

  • ツノモ

    Ceratium sp.

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、渦鞭毛虫、ゴニオラクス目

    よく見られる海産性の渦鞭毛藻で、名の通り角のようにとがった形をしている。

  • シヌラ

    Synura sp.

    微分干渉観察法

    TSAR、ストラメノパイル、不等毛植物、黄金色藻

    細胞が放射状に並んで球状の群体を作る原生生物だが、ボルボックスの仲間ではなく黄金色藻に属している。この生物もうまく鞭毛運動を協調させて回転しながら光の方へと移動する。ボルボックスの仲間は群体の細胞数が決まっているが、この生物は組織化が進んでいないため細胞数にばらつきがある。

  • クリプトモナス・パラメシウム

    Cryptomonas paramecium

    微分干渉観察法

    クリプチスタ、クリプト植物、クリプトモナス目

    よく見られるクリプト藻類で、葉緑体が退化しているため従属栄養生物となっている。池の水などに米を入れて置いておくとこの生物が良く増殖している。細胞にガレットと呼ばれる陥入構造があり、ここの周りに射出体と呼ばれる射出装置がある。

  • ディレプタスの仲間

    Dileptidae

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、ディレプタス目

    細長い形をした繊毛虫で、細胞前部は吻と呼ばれる象の鼻のような形状をしている。この吻を巧みに動かして先端にある毒で他の繊毛虫やワムシなどの生物を攻撃し、動けなくなった獲物を口まで運んで捕食する。

  • ハルテリア

    Halteria sp.

    微分干渉観察法

    TSAR、アルベオラータ、繊毛虫、棘毛類

    淡水でよく見られる小型の丸い繊毛虫。普段はゆっくりと水中を移動していて、時折ジャンプするように素早く移動する。特徴的な動き方をするため、跳ねるように高速移動する小型の原生生物がいればハルテリアの可能性が高い。分子系統学的に棘毛類に属することが分かっているが、スティロニキアなどで見られるような繊毛を使った歩行運動は行わない。

  • ミドリムシ

    Euglena gracilis

    微分干渉観察法

    ディスコバ、ユーグレノゾア、ミドリムシ目

    健康食品などで用いられている原生生物。普段は鞭毛を使って水中を泳いでいるが、基質の上や狭い空間にいるとすじりもじり運動と呼ばれる変形運動を行うようになる。この種は野外だと珍しいのだが、培養が容易であるため実験や食品に用いられている。

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