領域の概要

 知能とは、なるべく広く捉えれば「環境への適応能力」ともいえ、これに従えば単細胞の原生生物(真核単細胞生物)とて原生的な知能を有していると言えます。むしろ数億年にわたる進化の洗練によって、複雑な野外環境でこそ巧みな原生知能を発揮しています。この行動能力は、多細胞生物における単細胞性行動(受精時の精子運動、体内環境での細胞運動など)へと引き継がれていると思われます。

 本領域では、単細胞生物が潜在的に有している根源的な環境適応能力を「原生知能」と呼び、その潜在能力を覚醒させるために構築した人工環境を「ジオラマ環境」と名付けています。ジオラマ環境は、例えば、棲息環境の複雑さを模したり、知能テストのために設計されたりするものです。わかりやすい一例が、アメーバ状の粘菌が、ジオラマ環境としての迷路において、最短経路を見出す能力を発揮することです。

 このような細胞レベルで発現する原生知能のからくりは、しばしば細胞運動と環境の連成した動力学方程式により定式化できるため、本領域では、このような環境連成力学を徹底的に推し進めることによって、原生知能のアルゴリズム(ヒューリスティクス)の解明に取り組んでまいります。

(*ジオラマ行動力学:ジオラマ環境を設計して原生知能を覚醒させ、その仕組みを運動方程式で記述する学術)

ジオラマ行動力学 領域概要

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