ジオラマ行動力学
Ethological dynamics in diorama environments
ジオラマ行動力学Ethological dynamics in diorama environments
文部科学省科学研究費 助成事業 「学術変革領域研究(A)」 ジオラマ環境で覚醒する原生知能を定式化する細胞行動力学

2025年9月22~26日にわたり国際シンポジウム‘Oxford-Japan Symposium on Cell Behaviors in Simple to Complex Environments’を、オックスフォード大学数学研究所にて、オックスフォード大学Wolfson数理生物学センターと共同で開催しました。当研究領域の成果を発表し、関連する国際的な研究の進捗状況を学びました。そして関連する国際的な研究者コミュニティーと議論をしました。
Oxford-Japan Symposium 2025 Webサイト

組織委員は、Wolfson数理生物学センターからPhilip Maini教授(組織委員長)、Helen Byrne教授、Eamon Gaffney教授、Radek Erban教授、オックスフォード大学生物学科Mark Fricker教授の5名、当領域から中垣俊之教授(共同組織委員長)、石川拓司教授、飯間信教授、石本健太教授の4名でした。
シンポシウムは、Maini教授のオープニングリマークで始まりました。そのリマークにおいて、オックスフォード大学数理生物学センターと当研究領域関連分野との歴史的な関わり、並びにシンポジウムの目的が示され、生命科学研究における数学や物理学の重要性が強調されました。本シンポジウムのテーマは、数理生物学の新しい方向性を示しているので、本シンポジウム通じて活発な研究交流を期待していると、彼は参加者に呼びかけました。次に領域代表中垣教授が、シンポジウムの概要と当研究領域の紹介をしました。
英国を中心に欧米から36名、当領域関係者27名が参加し、39の口頭発表、19のポスター発表があり、1週間に渡り極めて活発な研究交流が行われました。

パネルディスカッション「A Research Direction in Cell Movement in the Next Decade -Cellular Behaviors in Simple to Complex Environments-」では、Gaffney教授、石本教授の進行で、6名のパネラーが会場の参加者とも意見交換しながら議論を行いました。パネラーは、Raymond Goldstein教授、Kirsty Wan教授、Radeck Erban教授、Mark Fricker教授、石川教授、中垣教授でした。その主な論点は、多細胞性への進化の観点や、行動生態学の観点をどのように取り入れていけるだろうか、でした。聴衆との意見交換も含めたパネルディスカッションは、示唆に富むものでした。
その熱が冷めやらぬまま、カンファレンスディナーの会場であるオックスフォード大学St Hughカレッジへと20分ほど歩きました。ディナーはケンブリッジ大学名誉教授のTim Pedley先生の乾杯で始まりました。カレッジの美しい英国庭園にかこまれた会場で、参加者は和気藹々と交流を深めました。


閉会セレモニーでは、6名(若手研究者)のポスター発表賞が表彰されました。
受賞者は、R. Crossley, S. Echihgoya, C. Fosseprez, A. Hosseini, S. Johnson, T. J. Jewell(敬称略)でした。
締めくくりに、Fricker教授がconcluding remarkをしました。
その内容を、参加者からの個別のコメントも含めてまとめると以下の通りでした。

「今回のシンポジウムのテーマは生物学的に極めて基本的で重要なものであり、本テーマに関わるこれほど多くの研究者が一堂に会したのは稀有でした。本テーマは、学際的であり、フィールド観察から、実験室での行動実験、分子機構解析、数理モデル化、情報処理アルゴリズム解析まで必要です。これらを、生物の進化の観点から捉える必要性があります。進化の観点と行動生態学の観点はもっと強調されるべきです。オックスフォード大学は動物行動学の研究の伝統があり、数理生物学センターもあります。ケンブリッジ大学はバイオメカニクスの伝統があり、細胞運動のバイオメカニクスを先導してきました。両大学に留学した日本人研究者も数多いですね。こうした交流の歴史を踏まえて開催されたのがこのシンポジウムなのです。このシンポジウムを契機として、今後、この分野の研究をここにいる皆さんと共に推し進めていくことが期待されます。」

1年以上前からオックスフォード大学数学研究所のメンバーと準備を進めた甲斐があり、実り多い一週間になりました。研究上の刺激も強く、最終日の石川教授のプレナリー講演からPedley名誉教授の最後の講演へと続いていく間に知的興奮が高まり、Fricker教授のconcluding remarksでは感動すら覚えました。本シンポジウムは、多くの方のご支援により実現しました。オックスフォード大学Wolfson数理生物学センターのRuth Baker教授からはジェンダーバランスや若手の参加比率に関するコメントをいただきSt Hughカレッジの協力ももたらしてくれました。事務手続きに関しては、オックスフォード大学数学研究所のイベントスタッフ、日本側領域事務局のスタッフ、シンポジウムの日英協調には北海道大学URA小木博士が貢献しました。最後に、組織委員の飯間信教授、石本健太教授は、領域の国際交流担当として本シンポジウムの全過程を中心的に管理運営しました。
